藍は、薬草として珍重された歴史は古く、書物にも記述が数多くあります。たとえば、『本草和名』(918 年)には、解熱剤として藍実を紹介。『原色牧野和漢薬草図鑑』(北隆館発刊)には、「生藍の葉、乾燥葉、種子の生および煎じ液が、消炎、解毒、止血、虫さされ、痔、扁桃腺円、喉頭炎に効果あり」と記されています。また、すくもを生で食べるとフグ中毒に効果があるといわれ、江戸時代、藍の商人が長州を訪ね、ひと握りのすくもと交換にふぐ料理をごちそうになったというエピソードも残こります。
藍は、葉も実も食用として親しまれていた身近な薬草です。藍の、食あたり防止や解毒作用といった薬効をごく自然に食生活に役立てていました。『徳島県薬草図鑑』(徳島新聞社/昭和59 年)の「アイ」の項の用途には、「食・染料」とあることから食用として一般的だったことがわかります。
昭和62年に、藍染めの復活運動に熱心な中西仁智雄氏の提案で、藍の料理会が開催された。料理を担当したのは、徳島県藍住町の「うなぎや」と、徳島市内の「きく樽」。その時の献立は以下の通り。
藍は、染料の原料としてだけでなく薬⽤植物として古くから、解毒や解熱、消炎のために利⽤されてきました。また、中国医学では、流⾏性感冒、脳炎、細菌性下痢、急性胃腸炎に効果があるとされています。
近年、タデ藍の成分分析や研究が進み、さまざまな疾患の原因とされる活性酸素を消去する抗酸化物質であるポリフェノールや、抗菌物質であるトリプタンスリンを含むことがわかっています。ポリフェノールの中でもケルセチンやケンペロールを特に多く含んでいます。ケンペロールは、野菜ではホウレンソウに最も多く含まれますが、藍においてはホウレンソウの10倍含有します。
昔の暮らしの知恵が、今、研究によって裏付けされました。いのちを守る藍の力に改めて注目したいと思わずにはいられません。